マンションの売却を不動産会社に依頼すると、その不動産会社は買い手を見つけるための広告活動を始めます。
一般的には、ここで他の不動産会社も閲覧できるレインズと呼ばれる物件サイトに売却マンションの情報を掲載し、他社からも広く買い手を紹介してもらえるよう広告展開します。そうすることで、より早く、より多くの買い手候補にリーチできるからです。
しかし実情として、顧客のメリットよりも自社利益を優先するために、他社に売却マンションを紹介しないというケースが一部で残っています。
これは「囲い込み」と呼ばれる、日本の不動産業界の悪しき慣習です。
不動産会社の仲介方法には
- 両手仲介
- 片手仲介
この2種類がありますが、このうち「両手仲介」という仲介方法が問題の発端になっています。
自分に不利益な売却活動をされないためにも、この「両手仲介」と、それに起因する「囲い込み」という悪しき行為について知っておいた方がいいでしょう。
マンションの売却方法|「両手仲介」と「片手仲介」とは?
不動産会社が依頼されたマンションを売却する時のやり方として、
- 両手仲介
- 片手仲介
という2種類の方法があります。
簡単に言うと、「両手仲介」とは、1つの不動産会社が売り主と買い主の両方の間に入り仲介することをいいます。
一方の「片手仲介」とは、売り主側・買い主側に別々の不動産会社が入り仲介することです。
- 両手仲介:
⇒1社が、売り主と買い主の両方の仲介をすること - 片手仲介:
⇒売り主側と買い主側に、それぞれ別の仲介会社が入ること
マンションを売却する顧客の立場では、片手仲介になるか両手仲介になるか選ぶことはできません。これは不動産会社の活動次第になります。
もう少し具体的に説明しましょう。
両手仲介のケース
両手仲介は、売り主と買い主の間を1社の不動産会社が仲介する方法です。
たとえば、売り主Aが不動産会社Z社にマンションの売却を依頼するとします。この時点でまずZ社は売り主側の仲介を担当することになります。
このとき、Z社は広告活動を行い、自社で買い主も見つけてくるという流れです。
仮に、Z社が投函したチラシを見たBさんがZ社に問い合わせをして、そのまま内見・購入契約の流れになると、Z社が売り主と買い主の両方を抱えることになります。
左手で売り主、右手で買い主を仲介するということで、これが両手仲介になります。
↓
Z社が両方仲介して契約
↑
買い主
片手仲介のケース
片手仲介は、売り主側の仲介会社と買い主側の仲介会社が別々のケースを言います。
たとえば、Aさんのマンション売却を受け持ったZ社が、広告活動の一環として「レインズ」に売却マンション情報を登録したとします。
※「レインズ」とは、すべての不動産会社が閲覧できる、現在の売り出し物件や過去の成約事例などが管理・掲載されている業界専用のサイトです。
そのレインズを別の不動産会社X社が見て、「新しく売りに出たこのマンションは、この前マンションを探していると言っていたウチの顧客Cさんが気に入りそうな物件だな」と思いました。
この場合、X社が売り手側のZ社に連絡をして、
X社「そちらが売りに出されているマンションなんですが、ウチのお客さんのCさんが興味を持っておりまして、見学させて頂けないでしょうか?」
という旨を伝えます。
その後Cさんがマンションの買い手になった場合、売り主側の仲介担当をZ社が、買い手側の仲介担当をX社が担当することになります。
このように、売り主側と買い主側でそれぞれ別の不動産会社が付くケースが「片手仲介」です。
売り主/Z社が仲介担当
↓
双方で売買交渉
↑
買い主/X社が仲介担当
多くの不動産会社は「両手仲介」を狙いたい?
売り主からすると、1社で買い手を見つけようとする(両手仲介)より、周囲の不動産会社にも情報を渡して複数社で買い手を探してもらう方(片手仲介)が、早く買い手が見つかりそうに思えます。
しかし実際のデータとして、大手の不動産会社ほど両手仲介のケースが多いです。
なぜ両手仲介が多いのかというと、不動産会社からすれば単純に両手仲介の方が儲かるからです。
この辺りのカラクリも、ぜひ知っておいた方がいいので説明します。
不動産会社の収入源である「仲介手数料」について
不動産会社の収入源は、言わずもがな仲介手数料です。
不動産売却において、不動産会社が手にする仲介手数料は以下の通りです。
売却価格の3%+6万円(※価格400万以上の場合)
一応これは上限の数値なのですが、ほぼ全ての不動産屋はこの上限数値で仲介手数料を頂戴しています。
つまり、5000万円でマンションを売却した場合、
5000万 × 3% + 6万円 = 156万円
となり、156万円が仲介手数料つまり不動産屋の収入になるわけです。
両手仲介は、売り手側と買い手側の仲介手数料を2重取りできる
一件のマンション売却に関わる不動産業者は、通常は2社います。「売り手側」の担当会社と、「買い手側」の担当会社。つまり、片手仲介のケースです。
片手仲介のケース
マンションの売りたい人
↓
↓<売り主の仲介会社(手数料156万)>
↓
【売買契約5000万】
↑
↑<買い主の仲介会社(手数料156万)>
↑
マンションを買いたい人
片手仲介だとこんな感じの構図ですね。
この場合、売り手側の仲介業者は売り主から、買い手側の仲介業者は買い主から、それぞれ同じ156万円の仲介手数料をもらうということになります。
一方でもし、売り手側の仲介も買い手側の仲介も同じ会社が担う「両手仲介」だった場合、一社が売り主側の手数料と買い主側の手数料を両方もらうことができるのです。
当然、不動産会社の儲け(仲介手数料)は片手仲介と比べて2倍になります。
5000万の物件を売り手側のみで片手仲介した場合の手数料
- 5000万 × 3% + 6万円 = 156万円
5000万に値下げした物件を売り手・買い手の両手仲介した場合の手数料
- (5000万 × 3% + 6万円)×2 = 312万円
このように、不動産会社としては「両手で売った」方が儲かることになります。
だから両手仲介で売却したい。だから、買い手も自社で見つけたいのが不動産会社の本音です。
しかしそれは同時に、買い手を他の不動産会社に見つけて欲しくないということでもあります。
この仕組みこそが、両手仲介を狙う不動産会社の悪質な行為に繋がります。
両手仲介を狙う不動産会社の悪質な「囲い込み」とは
どうにかして両手仲介をしようとするあまり、売り主の意に反した売却活動をする不動産会社もあります。
その代表的とされるのが「囲い込み」という悪質な行為です。これは簡単に言うと、不動産会社が両手仲介をしたいがために、他社へ物件を紹介しないことです。
囲い込みの実例
たとえば、AさんがY社にマンションの売却を依頼したとします。このとき、媒介契約の種類によってはY社はレインズ(他の不動産会社すべてが閲覧できる物件サイト)に登録する必要があります。
そうすると通常は、レインズを見た他社から「この物件、うちの顧客に購入検討しそうな人がいるから案内してもらえないか?」と問い合わせくることが多いです。
しかしこのときY社が、本当は買い手が見つかっていないのに「その物件はすでに申込済みなので案内できません(あるいは、”予約済み”など)」と嘘をついて断るような行為を、囲い込みといいます。
要は、買い手は絶対に自社で見つけて両手仲介したいので、他社からの申し出は嘘をついてまで断るのです。
このように囲い込みするということは、他社のツテから買い手候補を見つけることができなくなり、集客が減ることになります。これは売り主からするとデメリットしかありません。
つまり囲い込みは、顧客のメリットより自社の利益を優先する典型的な行為にあたります。
事実、未だに囲い込みを行う悪質な不動産会社はあります。そのため、完全に防げるわけではないですが、囲い込みの知識をつけて対策を講じておくことが重要です。
あまりに内見の申し込みが少ないときは囲い込みの疑惑も?
「物件のスペックもそこまで悪くなく、妥当な価格で売り出してるのに全く内見の予約が入らない……」という場合、もしかすると不動産会社が囲い込みをして、他社からの内見希望者を断っている可能性も考えられます。
どうしても囲い込み疑惑を確かめたいときは、友人や知人に”サクラ”をお願いして、他の不動産会社からマンションの内見希望を入れてもらいましょう。
もし友人(他社の不動産屋)の内見希望に対して「実はそのマンションもう買い手が決まっていて……」などと断ったのであれば、囲い込み確定です。事情を話して仲介契約を解除を検討した方が良いかと思います。
囲い込みの対策
囲い込みは不動産会社の業務内で行われるので、客側である売り主が完全に防ぐのは難しいです。
しかし、以下の対策をすることで囲い込みの予防になります。
- 片手仲介しか行わない不動産会社に依頼する
- 囲い込みという行為を知っていることを話す
一番抑止力になるのは、そもそも片手仲介しか行わない不動産会社に売却を依頼することです。片手仲介しか行わないということは、自分で買い主を見つけてきても買い主からは仲介手数料をもらわないということです。
つまり、この場合は他社から検討者を紹介されたとしても、どうせ買い主からは仲介手数料をもらえないので、他社からの紹介に抵抗はないということです。そのため、片手仲介しか行わない不動産会社が囲い込みをする意味はないため、恐らく囲い込みはしないでしょう。
ほかには、囲い込みという行為を知っていることを不動産会社に伝えるのも多少の抑止力になります。「悪しき慣習があるのを知ってるからな。知らないと思うなよ」とプレッシャーを与えることができるからです。
まとめ
ちなみに、アメリカの不動産業界では両手仲介による契約はほぼ存在しません。顧客の利益に反するためNGになっているからです。
日本でも両手仲介は度々問題視されており、とくに大手不動産会社の囲い込み問題はニュースにもなりました。過去、民主党政権時代に両手仲介禁止に向けた動きがありましたが、結局可決に至るまえに政権が倒れたので飛んでしまったこともあります。
何はともあれ、こうした素人には見えにくい「損失」を防ぐためには、売り主側も多少は不動産売買の知識や業界事情について知識をつけておくことが一番の盾になります。
「無知はカモにされる」とは、どの業界でも言えることですからね。
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