マンションを売却する時というのは、不動産会社に依頼をしただけで売れるようになるわけではありません。その依頼した不動産会社が広告活動を行うことで、購入見込み客にその情報が届き、買い手が付くという仕組みになります。
どこの不動産会社も広告に力を入れたいと思っていることでしょうが、広告費などのコストがかかる部分でもある為、どの広告に力を入れるかはその不動産会社の考え方によって違ってきます。
不動産会社ではどのような広告活動をしているのかは、売主もある程度は把握しておいた方がいいので、この記事では不動産会社の広告活動について解説していきます。
不動産会社の広告活動
まずは基本的なことから。
マンションを売却するときに、不動産会社は主に以下のような広告活動をします。
- レインズへの登録
- チラシの投函
- 自社のホームページ掲載
- ポータルサイトへの掲載
- オープンハウス
マンション売却時の広告は基本的にこの5種類です。
これらの広告活動をすることで、中古マンションを売却していることを認知させ、集客へとつなげています。各広告活動については後述で詳しく解説します。
新築マンションと中古マンションの違い
たとえば新築マンションの売却であれば、建築現場があるので「この場所にマンション建つんだな~」と周辺の人に存在を認知させることができます。
また、モデルルームを建てて売却活動するので、モデルルームに飛び込みで入ってくる人もいるかもしれません。もちろん中古マンション売却と同じように、チラシやネットで広告もします。
しかし、中古マンションの売却は新築マンションと違って、パッとマンションの外観を見ただけでは売り出しているかどうかは分かりません。そのため「売却中」であることを知らせるには、不動産会社が行う広告活動は必須になります。
そのため、中古マンション売却の集客は広告料や広告種類によって大きく変わってきます。
広告費用について
このような広告には費用がかかってきますが、基本的に広告費用は不動産会社が負担します。
ただし、売主の方で特別に依頼して広告料を増やしたり、特別なプランを申込んだりする場合には、売主の負担になる場合もあります。
その場合は不動産会社から前もって費用負担がある旨を伝えられ、売主がそれを了承したときだけになります。
【広告活動1】レインズへの登録
レインズとは、「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」の略称で、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピュータ・ネットワーク・システムのことです。
要するに、日本中のあらゆる物件データが管理されている業者専用データベースです。業界専用のスーモ(ポータルサイト)みたいなイメージの情報データベースで、ほぼ全ての不動産会社がこのレインズから物件情報を収集しています。
マンションを売却するときには、不動産会社と媒介契約を結びますが、「一般媒介契約」以外の契約ではレインズへの登録が義務になります。
- 一般媒介契約:登録義務なし
- 専属専任媒介契約:5日以内の登録義務
- 専任媒介契約:7日以内の登録義務
あなたのマンションを「売却中物件」とレインズに登録すれば、日本中の不動産会社に売却情報を知らせることができます。すると他社も、自分のところの顧客に「現在こういうマンションが売りにでていますがーー」と宣伝してくれるので、幅広く買い手を募集できるようになります。
ただ中には、買い手を他社に取られないように「囲い込み」という悪質な行為をする不動産業者もいます。
不動産会社は売主と買主からそれぞれ仲介手数料を貰う仕組みのため、売主/買主のどちらも自社で見つければ両方から手数料をもらえるわけです。これを「両手仲介(両手取引)」などと呼びます。
レインズの登録義務はあれど、他社に買い手を取られたくない。
すると悪質不動産屋は、他社から「そちらで売りに出されている◯◯というマンション、うちに興味を持っているお客様がいるのですが……」と連絡が来ても、
「あー、そちらのマンションはすでに申し込みが入ってしまいまして……」
などと嘘をついて、他社に渡さないようにするのです。これが「囲い込み」といって、不動産業界の大きな問題点となっています。
【広告活動2】チラシ(マイソク)の投函・ポスティング
続いて、ポスティングや新聞折込チラシといった紙広告の投函もします。
投函するチラシは「マイソク」と呼ばれる、ペラ1枚の広告がほとんどです。このマイソクが中古マンション売却時の広告の基本になります。
マイソクとは?
こちらがマイソク。A4のペラ1枚の販売図面です。
(ニーズマッチより引用)
マイソクには以下のような情報が掲載されています。
- 物件所在地などの情報
- 売却金額
- 間取り図
- 周辺施設
みなさんの家のポストにも、白黒や4色刷りで間取り図が大きく載っているチラシが投函されていたことはないでしょうか? それがマイソクと呼ばれるチラシ広告です。
マイソクは小さなペラ1枚の広告ですが、上記のように物件情報の全てが載っています。また、このマイソクをベースにネット広告へ展開していくので、全ての広告のベースになっている非常に重要なものになります。
マイソクは不動産会社が作成しますが、会社によってクオリティが全く違います。白黒紙面にただ情報を羅列しただけのマイソクを作る会社もあれば、専属デザイナーを使ってプロの広告を作ってくれる会社もあります。
たかがA4一枚のマイソクでも驚くほど集客効果が変わるので、マイソクの出来栄えは売主もしっかりチェックしておいた方がいいです。
マイソク作成のポイントは下記記事でまとめているので、売り主本人もマイソクを確認させてもらい、「もっとココをこうして欲しい」という点があれば遠慮なく不動産会社に注文しましょう。
チラシ(マイソク)の広告効果
チラシの広告効果としては、以下の点が挙げられます。
- 地元の方への認知効果が高い
- こちらからアプローチできる
- 繰り返し行える
まず、チラシは周辺のマンションなどをメインに投函するので、地元の方へマンションの売却を認知させることができます。逆にいうと、地元以外の広域の方へはアプローチ出来ない点はデメリットです。
また、チラシをこちらから投函するので、まだ本格的にマンションを検討していない潜在顧客へもアプローチできます。本格的に検討していない人は自ら情報を検索することが少ないので、チラシを見ることで本気度が上がっていく場合があります。
さらに、多くの不動産会社が自社でチラシを印刷し、営業マンが自ら投函するか、投函業者に依頼して投函します。広告費用自体は高いものではないので、繰り返し投函することができるのもメリットです。
……とは言いつつも、中古物件の場合、正直チラシ広告にはそこまで期待できる効果はありません。新築物件なら反響も得やすいのですが、中古物件のチラシ広告は”やらないよりはやった方がマシ”くらいの気持ちで取り組めばOKです。
近隣に売却を知られたくない場合は、新聞広告やポスティングはNGにしよう
マンションの売却を近所に知られたくないという人もいます。まだ居住中なら尚更、知られたくない場合も多いでしょう。
その場合は、不動産会社にチラシのポスティングはしないよう事前に伝えておく必要があります。
何も言わないままでいると、いち早く売却をしようと不動産会社の方で勝手にチラシを投函して回るかもしれません。
チラシ広告を完全に辞めるか、あるいはどの程度まで広告を出すかは、不動産会社の担当者と相談をして決めることが大事ですね。
【広告活動3】ポータルサイトへの掲載
ポータルサイトの特徴とメリット
次に、ポータルサイトへの掲載です。ポータルサイトとは、SUUMO(スーモ)やHOME'S(ホームズ)などのサイトのことです。
今の時代、物件情報を探す人の50%近くがまずネットで検索します。誰でも一度はSUUMOやHOME'Sを見たことがあると思いますが、それほどポータルサイトへの掲載は集客に不可欠になっています。そのため不動産会社は、広告費を払ってこうしたポータルサイトに売却マンションを掲載してもらうのです。
ポータルサイトには、以下のような特徴があります。
- 物件によって掲載しない
- 広域へ訴求できる
- 集客力は高い
大手ポータルサイトは費用が比較的高い広告なので、物件によっては掲載しません。掲載するかしないかの基準は不動産会社によって異なりますが、仲介手数料が低い安価な物件ではしないことが多いです。
またネット広告なので、チラシのポスティングのような地元限定ではなく全国の広域に訴求できる点と、集客力が高い点が特徴になります。
たとえば、「江東区 中古マンション 購入」と検索してみます。このように検索すると、検索結果画面の上位にポータルサイトが出てくることから、ポータルサイトを利用して物件を探す人は多いことが分かります。そのため、ポータルサイトは集客力が高い広告と言えるのです。
ポータルサイトに掲載する内容
ポータルサイトへ掲載する内容ですが、物件名や住所はもちろんのこと、外観写真や間取り図、室内写真も登録をすることができます。もちろん価格やその他の情報を載せることも出来ます。
とくに室内写真の撮り方で物件の印象は大きく変わります。この辺りまでテクニックやノウハウを持って掲載してくれる不動産会社がいいですね。
ポータルサイトに掲載しない不動産会社は避けよう
不動産会社の中には、こうした絶対不可欠なポータルサイトへの掲載をしない会社があります。およそ掲載(契約)しない理由というのは、
- 広告費をケチっている
- ネットが活用できない古い体質の会社
のどちらかです。
とくに不動産業界は昔ながらの経営を続けている”古い”会社も多いので、ネット広告が使えない・敬遠している会社も少数あります。
ただ、今の時代はネット広告の活用は絶対に欠かせないので、ポータルサイトを使わない不動産会社はその時点でパスした方がいいでしょう。不動産屋選びの段階でポータルサイトに掲載している会社かどうかを確認した方が良いです。
【広告活動4】自社のホームページ掲載
ポータルサイト以外のネット広告としては、自社のホームページへの掲載になります。ただ、この広告効果は不動産会社の規模によって異なります。
ネット広告の効果というのは、基本的にネット検索した時に上位に来るほど高まります。
例えば「江東区 中古マンション 購入」などと検索してみると、まずはスーモやホームズのようなポータルサイトが最上位に出てきます。その下に、不動産会社のホームページが出てくるという流れですね。
Webサイトにはそれぞれサイトパワーがあり、ネット広告にお金や労力を投下しているサイトの方が検索した時に上位表示されます。つまり、サイトパワーが強い大手ほど検索上位にサイトを持ってきやすい=広告力が強いと言えます。
およそどんな検索ワードで検索してみても、検索結果の1ページ目というのは、上位がスーモやホームズなどポータルサイトの物件ページ、下位に大手不動産会社HPの物件ページという具合です。
そして、検索結果の2ページ目以降はほぼ見られないと思っていいです。
このことからも、いかにスーモやホームズなど最大手ポータルサイトに物件情報を載せることが大事かが分かるはずです。
【広告活動5】オープンハウス
オープンハウスは、予約なしで自由に見学希望者を受け入れる集客方法です。新築物件でいうモデルルームみたいなものです。
オープンハウスは、集客力はかなり期待できる手法です。というのも購入検討者からすれば、煩わしい内見予約などの手続きなしに、ウィンドウショッピングのようにフラっと立ち寄れる気軽さがあるため圧倒的に足を運びやすいからです。
また、同じマンション内の購入検討者にリーチできるのも大きなメリット。実はマンションの購入者というのは、同じマンション内の人というケースも多いのです。
例えば、両親や子供を同じマンションに住まわせたい人などです。そうした人は、同じマンション物件の内見予約を入れるのも気が引けますし、もし内見して購入に至らなかった場合に売主とマンション内で気まづい空気になってしまうので心理的ハードルがあるのです。
こうした層の見込み客にも、オープンハウスはリーチしやすいというメリットがあります。
もちろん、メリットの裏にはデメリットもあります。詳しくは下記記事で解説しているので参考にしてみてください。
まとめ
このように、マンションを売却するときに不動産会社が展開する広告には色々な種類があります。その広告種類とそれぞれの効果は、ザックリとでも良いので把握しておきましょう。
そうすれば、不動産会社が行っている広告活動を売り主もしっかりチェックできます。
たとえば、「この広告は本当に効果があるのかな?」とか「この広告はもっとこうして欲しい」とか思うところがあれば、売主として不動産会社にしっかり意見しましょう。それは、結果的にマンションを早く・高く売ることにつながっていきます。
マンションの売却を検討しているのであれば、まず最初にすることが「査定に出す」ことです。自分のマンションがおおよそどの程度の価格が付くのか分からないと、住宅ローンや住み替えなど計画が立てられません。 査定は無料でできるので損することはないですが、一応マンションを査定してもらうときのポイントが2つあります。 まず複数の会社に査定依頼して「比較」をすること。 大手と中小のどちらにも査定してもらうこと。 まず、査定依頼は必ず複数社に出すこと。不動産会社によって付ける価格はバラバラなので、それを並べて比較することで相場感が見えてきます。最低でも4社以上には査定してもらいましょう。 そして、査定は大手だけでなく中小にも依頼すること。大手は抱えるデータ数も多いですがマニュアル化されているので機械的に数字を出しがちです。対して地元密着の中小は”狭く深く”であり、地元におけるより細部の内情まで熟知しているので大手には見えない面まで査定に反映してくれます。 近年は、大手も中小も含めて複数社に一括で査定依頼できる「一括査定サービス」があるので、わざわざ複数社にコンタクトする必要はありません。 例えば一括査定サービスの大手「イエウールでは、最大6社への査定依頼がわずか60秒で終わります。 公式HPイエウール もちろん完全無料です。ひと昔前からは信じられないほど便利な時代になりましたね。 入力も超簡単で、マンション情報を入れるだけですぐに査定開始できます。 もちろん全国対応しているので、地方の人でも安心です。提携している大手中小合わせて最大6社の対応可能な不動産会社を自動で選択して見積もりを出してくれます。 マンションの目安価格が分からないと売却するもしないも判断できないので、まずはサクッと査定してもらうことから始めましょう。 マンションバブルの崩壊が不安な人は、現在の自宅マンションの価値がどうなっているか把握しておけば、今後取るべき行動も判断しやすくなると思います。【追伸】自宅マンションがいくらで売れそうか把握していますか?