不動産を売却する上で耳にすることが多い「マイソク」という業界用語。これは一言でいうと売却物件の「販売図面」のことです。
売買に限らず賃貸物件の広告としても使われるので、成人以上の人ならほとんどの人が見たことがあるはずです。
こちらがマイソク。A4のペラ1枚です▼▼
(ニーズマッチより引用)
賃貸を契約したことのある方なら誰でもも経験あるかと思いますが、部屋を選ぶときはまずここから入りますよね。最近は店頭に行くとiPadなどで見せてくれることもありますが、お客さんが手元に残る資料として持って帰れるように紙でも出してくれるところがほとんどです。
まずこのマイソク(図面)を見て、どの家がいいか品定めするのが物件探しのスタート。つまり、このマイソクというのは買い手にとってのファーストインプレッション(第一印象)を決める最重要アイテムの一つなんです。
マイソクは、売り主が依頼した不動産会社が作ってくれるわけですが、このA4ペラ1枚で不動産会社のセンスが問われると言っても過言ではありません。
マイソク(販売図面)に記載される主な項目
マイソクの作り方は不動産会社によってマチマチであり、センスが問われる部分でもありますが、概ね必要事項として記載される項目は次のようなものです。
- 【間取り】
……間取り図面。建物の実物写真はない場合も。 - 【交通】
……最寄駅からの距離。およそ80m=1分の換算。 - 【専有面積】
……壁の厚みなどを含めた広さ - 【構造】
……木造、RC造(鉄筋コンクリート)、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート)など - 【築年数】
……1981年6月以前なら旧耐震、それ以降なら新耐震。 - 【管理費・修繕積立金】
……住宅ローンとは別に毎月かかる負担金。修繕積立金は後から値上げされるケースも多く、安すぎる物件は注意(詳しくは「管理費・修繕積立金の違いとは」を参照)
魅力的なマイソク(販売図面)の作り方・ポイント
マイソクの作り方・出来栄えは不動産会社によって違う
大体どこの不動産会社も自社でマイソクの基本フォーマット(テンプレート)を持っていて、それに合わせてマイソクを作成します。
当然ですが、殺風景でまるで魅力のないマイソクを作る業者もあれば、写真の色合いやキャッチコピーにまで徹底的にこだわった一級品のマイソクを作ってくれるところもあります。
マイソクは買い手にとっての第一印象になるわけですから、物件の部屋数や平米数のような機械的な数字以上に、
- 見た目(写真)がキレイか?
- マンション外観だけでなく室内の写真があるか?
- ウリとなる魅力的なキャッチコピーがあるか?
- 見た人を惹きつける視覚的なインパクトはあるか?
といったような、見た人の感情に訴えかける部分が非常に大事になってきます。
ひどい不動産屋だと、部屋の図面に特徴を1行2行書いてハイおしまい……みたいなペラペラでスカスカのマイソクを作るところもあります。しかもカラーではなく白黒で作るとかザラですからね。
マイソクは通常、専用のマイソク作成ツールだったりAdobeのイラストレーターで作成しますが、不動産業界も高齢者が非常に多いのでITツールを拒絶してまともに使えない人も多いんですよね……。
一方で、マイソクの重要性を熟知している優秀な不動産屋は、マイソク作成のために専属デザイナーを配置していたりするほどです。室内写真1枚の見栄えにもこだわるほど徹底します。
当然ですが、より魅力的なマイソクを作ってもらった方が、何倍も多くの購入見込み客を集めることができます。
見込み客の心を掴む魅力的なマイソク(販売図面)とは?
購入率アップに繋がる魅力的なマイソクの特徴を挙げてみましょう。
- カラーが前提(白黒はNG)
- 外観写真だけでなく室内写真がちゃんとある(外観、エントランス、ラウンジ、居室、眺望、周辺施設など)
- 写真は「明るい」「水平」であること(雨の日に撮影はNG)
- 売りポイントのキャッチコピーがある
- 周辺環境や立地などアピールポイントも箇条書きで簡潔に記載
- 目立たせる所とそうでない所を区別し、レイアウトにメリハリをつける
これくらいは最低限抑えておきたいポイントです。
とくに、マイソクに室内写真が載っていることが非常に大事です。マンションの外観と間取り図しか載っていないマイソクも多いですが、室内写真が見れるだけでお客さんの注目度は段違いです。
そして、室内写真はクオリティも大事です。
光の加減、角度、構図のこだわりだけで、格段に部屋の印象をアップできます。なるべく柔らかい光が入る晴れた午前中を狙い、少しでも部屋を広く見せられるよう角から広角レンズで撮影するのが王道です。
ときどき、写真が傾いていたり、ピントがズレていたり、雨の日に撮影されていて全体が薄暗かったりする販売図面も見かけますが、これらは論外です。
また、写真は「マンション外観」「室内」だけでなく、マンションの「エントランス」や「周辺施設」なども掲載しておくと、より購入者の想像を刺激できるのでプラス効果です。
エントランスなんかは、少し暗くなってライトアップされている写真を撮ると高級感を演出できるのでおすすめです。
マイソク(販売図面)は売主本人も必ずチェックしよう!
マイソクについては、不動産会社に丸投げするだけでなく、必ず自分でもチェックするようにしましょう。
担当の不動産屋に言えば、普通なら見せてくれるはずです。むしろマイソクを見せてくれないようなら、売る気がないペラペラな「見せられないマイソク」を使っている証拠です。そんな不動産屋なら手を切ってしまって問題ありません。
マイソクを見せてもらい、魅力がよく伝わっているか売り主本人がチェックしましょう。その物件の良さを最も肌で知っているのは、不動産屋ではなく売り主のあなたです。
住んでいるからこそ分かるアピールポイントがあるなら、「こういう文を入れてもらえませんか?」と不動産屋に相談して見てください。
住んでる本人の言葉こそ一番説得力があるのですから。
広告に載せる文章には「表現規制」というものがあるから、好きな文章を載せられるわけではありませんが。
作成したマイソク(販売図面)はどう使われるの?
通常、売主から物件売却の依頼を受けた不動産会社は、売りに出す物件情報を「レインズ」と呼ばれる日本中の不動産取引情報が登録されている情報データベース(Webサイト)に登録します。
レインズは不動産関係者のみがアクセスして閲覧できるデータベースであり、ここに売り出し物件を登録すれば国内ほとんどの不動産会社に対して「物件を売却希望です!購入希望の顧客がいたら宜しくお願いします!」と告知できるわけです。
そして、多くの場合はこのレインズに物件登録する際にマイソクを一緒に登録します。これが最初の広告活動ですね。
そうすると、その物件がレインズに新着物件として掲載され、レインズを見た同業他社が、
「お、また新しいマンションが売りに出てるな。……ほうほう、〇〇駅から徒歩5分で10階建の最上階か。
なになに、春にはベランダから満開の桜が見えるだって? ちょうどこの辺で見晴らしのいい部屋を探してお客さんがいたから伝えてみるか」
という感じで購入希望者を探してくれたりします。
物件ごとに登録されたマイソクはレインズからダウンロードできるので、他の不動産屋たちはそのマイソクを使って購入希望者を募ることになります。
レインズに登録する際には必須の記入項目が細かくあるのですが、マイソクの登録自体は任意なので登録しなくても良いのです。
でも、普通に考えればマイソクをきちんと登録して、「これ(マイソク)使っていいので、皆さん買い手探し宜しくお願いします!」と他社に協力を仰ぐ方がいいに決まってますよね?
ではなぜ、レインズにマイソクを載せようとしないのか??
その大きな理由は、他社に買い手を見つけて欲しくないからです。
つまり、買い手も自分たちで見つけたいというケースですね。そんな時はみすみす有力資料を他社に渡すまいとレインズへマイソクを載せません。
売り手も買い手も自分たちで見つけられれば、その不動産屋は両方から手数料を頂戴できるので2倍儲かるわけです。
このように、売り主と買い主を「両手」で掴んで仲介することを「両手仲介」と呼びます。
両手仲介を狙う不動産会社は他社より先に買い手を見つける必要があるので、情報がなるべく他社に漏れないよう広告活動を意図的にセーブする(マイソクを載せないもその一つ)ことがあります。
こういった「顧客(売り主)の利益よりも、自社の利益の最大化を優先する」ような不動産業者は意外と多いので、不動産屋選びには慎重にならなければなりません。
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まとめ
マイソクは、あなたの物件を売却するための最重要な広告になります。たったA4ペラ1枚のクオリティの差で、購入見込み客の集客数は何倍も変わってきます。
マンションを売却したい売り主の多くは、その売却活動のほとんどを不動産屋に丸投げしてしまいます。「待ってれば向こうがいい感じで売ってくれるはずだ」と盲目的に信じているから。
しかし、依頼した不動産屋が本当に優秀ならそれで良いかもしれませんが、そんな不動産屋はほんの一握りなのが実情です。
その不動産の魅力を最も理解しているのは売り主本人です。
不動産屋に依頼した後は任せっきりにするのではなく、きちんと自分でマイソクも確認し、どんな売却活動をしてくれているのかしっかり把握しておかなければなりません。
【追伸】自宅マンションがいくらで売れそうか把握していますか?
マンションの売却を検討しているのであれば、まず最初にすることが「査定に出す」ことです。自分のマンションがおおよそどの程度の価格が付くのか分からないと、住宅ローンや住み替えなど計画が立てられません。
査定は無料でできるので損することはないですが、一応マンションを査定してもらうときのポイントが2つあります。
まず複数の会社に査定依頼して「比較」をすること。
大手と中小のどちらにも査定してもらうこと。
まず、査定依頼は必ず複数社に出すこと。不動産会社によって付ける価格はバラバラなので、それを並べて比較することで相場感が見えてきます。最低でも4社以上には査定してもらいましょう。
そして、査定は大手だけでなく中小にも依頼すること。大手は抱えるデータ数も多いですがマニュアル化されているので機械的に数字を出しがちです。対して地元密着の中小は”狭く深く”であり、地元におけるより細部の内情まで熟知しているので大手には見えない面まで査定に反映してくれます。
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マンションの目安価格が分からないと売却するもしないも判断できないので、まずはサクッと査定してもらうことから始めましょう。
マンションバブルの崩壊が不安な人は、現在の自宅マンションの価値がどうなっているか把握しておけば、今後取るべき行動も判断しやすくなると思います。