アベノミクスそして東京オリンピック開催決定により2013年代ごろから長く続いてきたマンション市場のバブルは、じつは外国人投資家によって支えられていた面が大きい。とくに目立ったのは、中国人によるタワマンの「爆買い」です。
マンションバブルによって今や首都圏のマンションは平均6000万円弱まで値上がり、23区に至っては平均7000万円レベル。もはや一般的な日本人の年収で買えるようなレベルではありません。
じゃあ誰がバカ高いマンションを買いまくっていたかっていうと、中国人の富裕層です。2015年ごろをピークに彼らが投資用、セカンドハウス、民泊などの目的でタワーマンションを爆買いしたおかげでマンションバブルを支えていました。
しかし、ここ数年で「中国人投資家たちがタワーマンションを投げ売り始めている」という話が飛び交うようになりました。
爆買いから一転して、爆売りへ。中国人たちが売り始めるとなると、今までバブルを支えていたハシゴが外れ、それがそのまま巨大な売り圧力となってバブル崩壊の引き金になりかねません。
この記事では、中国人投資家たちがタワーマンションを売り始めた理由についてまとめていきます。
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2020年 東京オリンピック前の売り抜け狙い
2020年の東京オリンピックがマンションバブルを牽引した要因であることは明白です。なので投資目線で見れば、東京オリンピックの2020年”の前までに”、バブルが崩れる前にマンションを売却しとこうと考えるのは当然でしょう。
下記グラフはマンション市場の価格推移ですが、東京オリンピック開催が決まった2013年から価格が上昇しはじめているのがわかります。
東京オリンピック開催に向けて、マンションの値上がりを狙った投資家たちの買い需要、そしてインバウンド需要(外国人観光客)の高まりによるホテル宿泊施設の高騰などの要因によって、現在のマンションバブルが形成されました。
オリンピック後にバブル崩壊すると見る中国人投資家たち
中国人を中心とする外国人投資家たちは、やはりマンションバブルのピークは2020年東京オリンピックより前にくると想定して「売り」に動いている模様です。
彼らが考えている売り時は、購入から5年後である18年後半から19年前半にやってくる。地価はバブル超えの水準に暴騰した。あとは売るタイミングを間違えなければ大儲けできる。
一方で、中国の新興成金たちが、“爆買い”した湾岸エリアのタワーマンションを売却するのを引き金に“チャイナ”バブルの崩壊が始まる。不動産バブルは、東京オリンピック・パラリンピックを待たずに破裂する可能性が高い。
「東京五輪が近づくなかで、投資家層は『そろそろ投資の出口だ』と考えています。
日本は人口減少が続きますし、異常な低金利はこれまでのようには続かない。オリンピック以降の東京には、とくに明るい材料がありません。
(中略)
東京のマンション市場は、すでにピークアウトしていると思っています。オリンピックが頂点だと思えば、その前に売りたいというのが、投資家の考え。多くの投資家がそう考えれば、売り圧力が強くなり、当然、値段は下がります」
誰もが「みんなが売ると相場が下がるから、みんなより一足先に売り抜けよう」と考えるため、投資家の売りは2020年より前にくるわけですね。
1998年長野オリンピック後はマンション価格が下落している
前例として、比較的近年に開催された長野オリンピック(1998年)の時のマンション価格の推移を調べてみました。
長野オリンピック後の価格推移
- 1998年(五輪開催):昨年より約-4.7%
- 1999年:昨年より約-0.1%
- 2000年:昨年より約-2.6%
ご覧の通り、確かにオリンピックの年からガクンと価格が下落していました。
五輪の経済効果というのは冬季より夏季の方がはるかに高いです(競技数も夏季が3倍以上多い)。そう考えると夏季東京五輪の経済への影響レベルは、冬季の長野五輪のそれをはるかに上回るでしょう。上げ幅が大きかった分、下げ幅も大きくなるのは必然です。
また参考程度にしかなりませんが、直近でオリンピックを開催したロンドンやリオデジャネイロも五輪後には不景気が訪れています。
「なんでオリンピックが終わるとマンション価格が下がるわけ?」と思う人もいるかもしれませんが、市場というのは人々の需要と供給、もっと言えば人々の心理によって形成されるもの。
極端な話、そこに直接的な要因が実はなくとも、「みんなが下がると思ったら下がる」のが相場というものです。
「タワマン爆買いしていた中国人投資家たちが、ついに投げ売りはじめたらしい!」なんて聞いたら、なんかヤバそう自分も早めに売っておかないと……と不安になりますよね? その心理の連鎖がバブル崩壊を引き起こすわけです。
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中国人の民泊排除が進み、民泊目的のマンションを手放す動き
東京五輪に加えてもう一つ、中国人投資家のマンション投げ売りの要因となったのが、中国人に対する民泊排除の動きです。
首都圏のタワマンを爆買いした中国人たちは、その部屋をセカンドハウスや訪日中国人への貸し出し(民泊)に使っていた人たちが非常に多かったのですが、端的に言うと中国人による民泊運営が難しくなったのです。
もとより中国人の民泊はマナーの悪さなど問題視されている面も多くて(タワマンで馬鹿騒ぎしすぎなど)、マンションの管理組合が規約で民泊禁止するところが増えてきました。
それともう一つ、2018年6月15日に施行された「民泊新法(住宅宿泊事業法)」も影響が大きいです。
民泊新法とはいわゆる民泊の規制強化で、今後は民泊を運営するのに自治体への届け出が義務化され、営業日数も年間180日以内にすることなどの制限が加わることになりました。
これにより中国人の民泊継続が難しくなり、オリンピック前というタイミングも相まって日本市場に見切りをつけてマンションを売却・撤退の流れが加速しているようですね。
東京・新宿に16年、民泊への活用目的でワンルームマンションを買った中国人女性は「これ以上民泊は続けられない。東京五輪前で不動産価格が下がらないうちに売るつもりだ」と話す。
民泊規制について詳しくは下記記事↓
参考記事民泊新法により中国人のマンション売却が加速!市場相場の価格下落を招くか?
マンション売却の税金(税率)が大きく変わる「5年ルール」
最後にもう一つ、中国人投資家たちが今のタイミングでタワマンを売る理由に「税金の問題」が考えられます。
マンションの売却で利益がでると税金がかかるわけですが、その税率はマンションの所有期間(5年以下か5年超か)で変わります。
マンションを売却する年の1月1日時点で、物件を5年超保有している場合は「長期保有」。5年以下の保有である「短期保有」となります。
※実際の引渡し日ではなく、あくまで”売却する年の1月1日”が基準になります。
長期保有(5年超え)と短期保有(5年以内)で税率を見てみると以下の通り。
5年超え(長期保有)の場合
- 所得税:譲渡所得×15%
- 復興特別所得税:上記所得税額×2.1%
- 住民税額:譲渡所得×5%
5年以下(短期保有)の場合
- 所得税:譲渡所得×30%
- 復興特別所得税:上記所得税額×2.1%
- 住民税:譲渡所得×9%
参考中古マンション売却の税金|譲渡所得税の計算方法と3000万特別控除とは?
ご覧の通り、短期保有の方が税率は2倍近く高いことになります。
そのため簡単に言うと、マンションは購入後5年は保有してから売却した方が税金が半額レベルで安くなるわけです。
中国人投資家によるタワーマンションの爆買いは、アベノミクス(2012年末)〜2015年がピークでした。当然、売却益にかかる税金を安くするため5年は保有します。となると、5年ルールにより税金が安くなる2017年〜2020年のタイミングで中国人投資家の売却が一斉に始まる可能性があるけです。
ちょうど東京オリンピック直前ですし、タイミング的にも最高の売り時と言えるでしょう。そして現実にその兆候が見えはじめてきたのがここ1〜2年でした。
まとめ
今やタワーマンションの住人の10%は中国人とさえ言われており、上層階に至っては過半数近くが中国人所有者というタワマンもあります。それほど日本のマンション市場にチャイナマネーが入り込んでいたんですね。
しかし、中国人の爆買いも2016年には収まっており、この記事で書いたように
- 2020年五輪後の相場下落の可能性
- 民泊規制
- 保有期間5年を迎える時期
という要素が揃い始めた2018年ごろから、続々と売りに転換しはじめています。
2019年現在でマンション相場はいまだに高値圏で止まっていますが、すでにピークを超えて折り返しに入っているという見方も強く、2020年の東京オリンピックまでに大きな動きがあるかもしれません。
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そして、査定は大手だけでなく中小にも依頼すること。大手は抱えるデータ数も多いですがマニュアル化されているので機械的に数字を出しがちです。対して地元密着の中小は”狭く深く”であり、地元におけるより細部の内情まで熟知しているので大手には見えない面まで査定に反映してくれます。
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