マンション市場考察

民泊新法により中国人のマンション売却が加速!市場相場の価格下落を招くか?

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2018年に入り、それまで日本のマンションを買いあさっていた中国人投資家たちのマンション投げ売りが加速しています。

理由の一つは、おそらく好景気の天井を付けるであろう2020年東京オリンピック前に、高値のうちに売っておきたいという思惑。

そしてもう一つ大きな理由が、2018年6月15日に施行された「民泊新法(住宅宿泊事業法)」の存在にあります。

「民泊」とは、個人の家を宿泊施設として他人に有料で貸し出すことです。この事業を行うための条件ハードルが、新法によって厳しくなります

これまで首都圏のマンションを中国人が”爆買い”していた理由は、当然ビジネス的な投資です。購入したマンションを民泊物件として主に中国人の旅行観光客に貸し出すことで収益化していました。

しかし、詳しくは後述しますが、2018年6月に施行された民泊新法により中国人の民泊経営は非常に難しくなりました。それにより採算が取れなくなり、民泊マンションを売却して事業撤退する中国人オーナーが相次いでいるのです。

この問題には「しばしマナーに問題のある中国人が撤退してくれるのは良いこと」という意見も多いですが、それとは別に「中国人の投げ売りによってマンション相場の価格下落が加速するんじゃ?」という懸念点が多いにあります。

とくに2020年あたりをターゲットに売却予定を立てている人は下手したら大打撃になるおそれも……。

そこでこの記事では、いま話題の民泊新法についてと、中国人投資家のマンション売却による市場への影響を考察していきます。

 

事業撤退が相次いでいる「民泊新法」とは?

民泊新法施行の背景

2018年6月15日より「民泊新法(住宅宿泊事業法)」が施行されました。簡単に言うと、民泊ビジネスをする上でのルールが厳格化され、個人が民泊を行うハードルが今までより高くなります

具体的な規制内容は次で解説しますが、例えば「届け出の提出が義務化」などが一つですね。

国としては民泊に反対姿勢なわけではなく、むしろ2020年に外国人観光客4000万人を目標としていて宿泊施設が現状足りないため、そこを民泊で補おうとしています。

ただ、資格も認定も不要で誰でも民泊ビジネスができてしまう状態だと、詐欺的な運営をする輩がいたり、近隣住民に迷惑をかけたり、「宿泊施設」に必要な設備を用意していなかったり、宿泊客に乱暴する輩がいたり、部屋に盗撮カメラを仕込んで貸し出す輩が出てきたりと、なにかと問題が頻発しています。

そもそも今までも貸し出しには「簡易宿泊業」としての許可が必要でしたが、無許可のまま民泊を続ける人が後を絶たずに無法地帯になってしまうという問題もあります(いわゆる”ヤミ民泊”)。

そうした背景などを鑑みて、もう少し事業主および民泊物件を精査するための規制やルール作りなのでしょう。

民泊新法で変わること(規制内容)

主な新ルール

  • 民泊物件は事前に自治体への届け出が義務化
  • 営業日数は年間180日以内にすること
  • 宿泊台帳や消防設備が必要に
  • 自治体ごとのルールに従う

とくに影響が大きいのは、届け出の義務化と、営業180日以内ルールです。

民泊の届け出が非常に面倒

今後は、届け出を出さないと民泊事業ができなくなります。届け出といってもちょろっと申請書を書けばOKなんて甘いものではなく、必要な書類は13種類におよびます。行政書士に頼むレベルの大変さであり、届け出を出す時点で個人には相当ハードル高いです。

そのおかげで、6万件を超える民泊物件を掲載していた大手仲介サイト「Airbnb」では、すでに届け出のない物件が大量に掲載削除されて18000件前後まで落ち込み、全体の80%が削除されてしまいました。

以下の、届け出のために必要な書類の多さを見れば、個人事業主の心が折れるのも無理ないでしょう。

<参考>個人の民泊オーナーが届出の際に必要な添付書類

  • [1] 成年被後見人及び被保佐人に該当しない旨の後見等登記事項証明書
  • [2] 成年被後見人及び被保佐人とみなされる者並びに破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書
  • [3] 未成年者で、その法定代理人が法人である場合は、その法定代理人の登記事項証明書
  • [4] 欠格事由に該当しないことを誓約する書面
  • [5] 住宅の登記事項証明書
  • [6] 住宅が「入居者の募集が行われている家屋」に該当する場合は、入居者募集の広告その他それを証する書類
  • [7] 「随時その所有者、賃借人又は転借人に居住の用に供されている家屋」に該当する場合は、それを証する書類
  • [8] 住宅の図面(各設備の位置、間取り及び入口、階、居室・宿泊室・宿泊者の使用に供する部分の床面積)
  • [9] 賃借人の場合、賃貸人が承諾したことを証する書類
  • [10] 転借人の場合、賃貸人及び転貸人が承諾したことを証する書類
  • [11] 区分所有の建物の場合、規約の写し
  • [12] 規約に住宅宿泊事業を営むことについて定めがない場合は、管理組合に禁止する意思がないことを証する書類
  • [13] 委託する場合は、管理業者から交付された書面の写し

引用All About News

こんな提出書類を要求しておいて、本当に民泊を推進する気があるのでしょうか……? と疑いたくなるレベル。

実際に施行開始した2018年6月で、既存オーナーたちからの届け出はほとんど出ていないそう。Airbnbで6万件の民泊物件が登録されていたものの、届け出の申請数は4000件弱と、全体の10%も届け出を出していない状況です。

ちなみに、金曜夜〜日曜の週末営業のみという鬼畜ルール(※)も追加される新宿区では、相談1000件に対して受理数がわずか45件という悲惨な有様。

(※)自治体によって独自の規制をいつでも上乗せできるというのも、ホスト(運営者)側からすると厳しい点です。いつ新たな制限事項が出てくるか分かりませんから

この数字を見ても、相当数の個人オーナーが民泊ビジネスから撤退を余儀なくされていることが分かります。

営業は年180日以内しかできない

年間180日を超えて営業すると旅館業に抵触するため、民泊ビジネスとして貸し出すには営業日を年間180日以内にしないといけません(超えるようだと「旅館業法」に基づく許可が必要になる)。

これでは採算が取れない業者が相次ぐでしょう。中国人投資家のように貸し出すために物件購入したような人は、年間の半分はただの空き家になってしまうわけですからね。

ただでさえ届け出の申請や消防設備の用意などコストは上がり続ける中で、取れる利益が大幅に減るようなら、個人のビジネスとしてはかなり苦しくなるのは間違いありません。

 

中国人の売却がマンション市場のバブル崩壊の引き金になるか?

すでに中国人のマンション投資家は日本市場に見切りをつけてマンションを売却、撤退し始めているようです。

東京・新宿に16年、民泊への活用目的でワンルームマンションを買った中国人女性は「これ以上民泊は続けられない。東京五輪前で不動産価格が下がらないうちに売るつもりだ」と話す。

引用https://www.recordchina.co.jp

やはり2020年の東京オリンピックがかなり意識されていますね。

東京でのオリンピック開催決定から、マンション市場は五輪効果で好景気になってきました。

ただ、2020年の前には天井をつけてバブル崩壊すると予測されています。

というのも、「2020年のピークで売ろうとする人が続出するはずだから、自分はそれより少し早く売り抜けよう」という投資家や不動産所有者の考えが連鎖するため、実際の下落は想定より前倒しで訪れるのが世の常だからです。

そのため、マンションを売却するなら2020年の東京五輪では遅すぎる。もっと早くに売っておくべきであることは下記記事に詳しく書きました。

参考記事マンションは2020年東京オリンピックまでに売却すべき。五輪の影響をデータで見てみる。

そこへ2018年6月の民泊新法という売り材料が出てきたため、これが引き金となってマンション市場の下落は「東京五輪より前に来る」という予想より、さらに早く来るかもしれません。というか、今現在ですでにピークを迎えた可能性も。

日本で民泊運営している人たちも、今のうちに高値で売却して少しでも資金回収して撤退しようと考えている人が多そうです。

みんながマンションを投げ売りしはじめると当然マンション相場は下がり始めます。バブルが崩壊する一番最初の引き金はいつだって軽視しがちな小さなことだったりするので、マンションバブルも「民泊新法」が引き金となって下落に転じるかもしれません。

東京五輪あたりを狙ってマンション売却を考えている人は、想定よりも早くバブルが天井をつけて下落に転じる可能性を頭に入れておいた方がいいでしょう。

 

【追伸】自宅マンションがいくらで売れそうか把握していますか?

マンションの売却を検討しているのであれば、まず最初にすることが「査定に出す」ことです。自分のマンションがおおよそどの程度の価格が付くのか分からないと、住宅ローンや住み替えなど計画が立てられません。

査定は無料でできるので損することはないですが、一応マンションを査定してもらうときのポイントが2つあります。

まず複数の会社に査定依頼して「比較」をすること。

大手と中小のどちらにも査定してもらうこと。

まず、査定依頼は必ず複数社に出すこと。不動産会社によって付ける価格はバラバラなので、それを並べて比較することで相場感が見えてきます。最低でも4社以上には査定してもらいましょう。

そして、査定は大手だけでなく中小にも依頼すること。大手は抱えるデータ数も多いですがマニュアル化されているので機械的に数字を出しがちです。対して地元密着の中小は”狭く深く”であり、地元におけるより細部の内情まで熟知しているので大手には見えない面まで査定に反映してくれます。

近年は、大手も中小も含めて複数社に一括で査定依頼できる「一括査定サービス」があるので、わざわざ複数社にコンタクトする必要はありません。

例えば一括査定サービスの大手「イエウールでは、最大6社への査定依頼がわずか60秒で終わります。

公式HPイエウール

もちろん完全無料です。ひと昔前からは信じられないほど便利な時代になりましたね。

入力も超簡単で、マンション情報を入れるだけですぐに査定開始できます。

もちろん全国対応しているので、地方の人でも安心です。提携している大手中小合わせて最大6社の対応可能な不動産会社を自動で選択して見積もりを出してくれます。

マンションの目安価格が分からないと売却するもしないも判断できないので、まずはサクッと査定してもらうことから始めましょう。

マンションバブルの崩壊が不安な人は、現在の自宅マンションの価値がどうなっているか把握しておけば、今後取るべき行動も判断しやすくなると思います。

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