マンションをはじめ、不動産の売買契約を結ぶときには、買主が売主へ『手付金』を支払います。
これは主に買主が安易に売買契約をキャンセルできないようにするために予め差し出すお金であり、先に手付金を支払ってもらうことで売却契約の履行を安定的なものにできます。要するに、ドタキャンを防ぐための仕組みですね。
契約後キャンセル時のキャンセル料にもなるので、その手付金を「いくらに設定するものか?」「どのように決めればよいものか?」を知ることは、マンション売買において実は重要です。
そのため、今回は手付金に関して知っておくべきことを解説します。
手付金とは何か?
手付金とは、売買契約時に買主が売主へ売買金額の一部として預けるお金のことです。
買主は、もし契約後に購入キャンセルすると先払いした手付金を放棄しなくてはなりません。つまり手付金は、一度交わした契約を安易にキャンセルできないようにするための先払い金になります。
言い方を変えれば、手付金は契約キャンセル時の違約金(=キャンセル料)にもなるお金です。
売買契約のときは、手付金の振り込みを確認してから契約を結びます。手付金をどう設定するかでその売買契約の安定性が決まるので、非常に重要な判断になります。
例を挙げて説明しましょう。
手付金は頭金に充当される
たとえば、マンションの売買契約を以下の条件で締結したとします。
- マンションの売買金額は3,000万円
- 頭金を500万円に設定
- 残金の2,500万円は住宅ローンを組んで購入
仮にこのケースで、手付金を300万円として設定します。
まず買主は、売買契約までに売主が指定する口座へ300万円振り込みます。防犯上の観点から振り込むことが多いですが、現金手渡しで授受される場合は必ず手で数えて金額を確認します。
その300万円は、頭金500万円に充当される金額になります。
なので、マンションの引き渡し日に差額の200万円(頭金500万円-手付金300万円)と、住宅ローンの2,500万円を買主は売主に支払うという流れになります。
仮に、頭金が0円で3,000万円住宅ローンを組む場合は、引渡時に売主は買主へ手付金の300万円を返還するという流れです。
手付金は違約金になる
買主・売主が売買契約を一方的にキャンセルする場合は、先に払った手付金を放棄しなくてはなりません。つまり手付金はそのまま違約金になります。
前項のケースで買主または売主が一方的に売買契約を解除する場合は、手付金の扱いは以下の通りです。
- 買主は手付金をそのまま没収される
- 売主は手付金を返還して、手付金と同額を買主に新たに支払う
契約キャンセルは買主側がするケースが多いですが、売主がキャンセルした場合でも手付金は違約金となります。
買主の一方的キャンセル
買主が一方的に売買契約をキャンセルするときは、以下のようなケースのときです。
- 気が変わってキャンセルしたい
- ほかに良い物件があったのでキャンセルしたい
- 住宅ローンの本審査に自己都合で否決になった
上記のケースで一番多いのは「住宅ローンの本審査に否決になった」ときです。
たとえば、買主が勝手に転職したり、カードローンを延滞したりすると、仮審査が承認されていても本審査で否決になることがあります。その場合、買主の責任と判断されれば、買主の自己都合キャンセルになり手付金は没収されます。
売主の一方的キャンセル
売主側が一方的キャンセルしたいケースはあまりありません。たとえば、「やはり売却をやめて住み続ける」や「知人が買いたいと言ったので知人に売りたい」などが考えられますが、ケースとしては少ないでしょう。
どうしても売り主が契約キャンセルしたい場合は、買い主から受け取っていた手付金を返還し、さらに同じ額をキャンセル代として買い主に支払う必要があります。
手付金には上限と保証がある
次に、手付金として預かって良い上限金額と、手付金の保証について。この2点は、手付金額の設定にも影響するので非常に重要です。
手続金の上限について
手付金の上限は以下の2通りあります。
- 売主が宅建業者の場合:売買代金の2割以下
- 売主が個人の場合:上限なし
売主が宅建業者の場合とは、主に新築マンションの売買です。中古の場合はリノベーションマンションの売買のときですね。そのため、通常の中古マンションの売買は「売主が個人の場合」に該当するので、手付金の上限はありません。
ただし、金額についての詳細は後述しますが、一般的に個人が売主の場合でも20%を超える金額を手付金として徴収することは非常に少ないです。なぜなら、売買代金の20%は相当な金額になるので、買主が一括で支払うのが難しいからです。
手付金の保証について
また、手付金は以下のように、金額によっては保証する必要があります。
- 未完成物件の取引:売買代金の5%または1,000万円を超えるとき
- 完成物件の取引:売買代金の10%または1,000万円を超えるとき
中古マンションの売買は「完成物件の取引」に該当します。
また、中古マンションの売買であれば仲介する不動産会社が保証の手続きをして、新築マンションであれば売主である不動産会社が保証の手続きをします。
いくらが良い?手付金額の設定基準
結論から言うと、手付金額をいくらに設定するかは取引ごとで異なります。しかし、上述したように手付金は違約金となるので、設定金額は慎重に決めなければいけません。
手付金額はキリの良い金額
一般的に手付金額は、以下のようにキリの良い金額で設定されることが多いです。
- 100万円や200万円など100万円単位の金額
- 売買代金の5%や10%などキリのよいパーセンテージ
売主がキャンセルするケースが少ないことを考えると、手付金は多く預かっておいた方が買主のキャンセルリスクは下がります。ただ、上述したように売買代金の20%は買主も抵抗があるので、10%程度を目指すのが現実的です。
ただ、物件金額によっても考え方は異なります。
目安として、1,000万円~3,000万円未満の売買金額であれば、100万円以上は欲しいところです。100万円を切る手付金だと、買主も心理的にキャンセルしやすくなるからです。
また、3,000万円~5,000万円であれば、少なくとも売買金額の5%は手付金として預かっておきたいところです。この価格帯を購入できる買主は、100万円の手付金でもキャンセルするリスクがあります。
5,000万円以上の金額であれば、売買金額の5%以上である250万円以上を目安に手付金を設定しましょう。
不動産会社と手付金額を相談しておく
前項のように、売買代金が3,000万円未満であれば100万円以上、3,000万円以上であれば売買代金の5%以上を目安金額にします。このとき大事なのが、売却活動中に不動産会社と相談しておくことです。
そのときは、「できれば売買代金の10%以上は手付金として欲しい」と伝えておくと良いでしょう。そうすれば、不動産会社の担当者も、検討が進んでいる買主に事前に手付金の話をすることができます。
事前に手付金額の話をしておけば、買主も用意しておくべき金額が分かります。そのため、預かれる手付金額を増やせる可能性が上がるということです。
また、最初から「10%以上必要」と買主に伝えておけば、そこから手付金を下げる交渉をされても「5%以上」に設定できる可能性が上がります。
引渡し日も加味して考える
手付金額の設定では、引渡し日を加味して考える必要があります。なぜなら、売買契約から引渡し日が長ければ、買主の気が変わったり、ほかの物件が出てきたりして、買主のキャンセルリスクが高まるからです。
通常、売買契約から引渡し日は1.5か月~2か月ほどで設定します。そのくらいの期間であれば上述したような金額を手付金として設定すれば良いでしょう。しかし、それ以上の期間を設定するなら、上述した手付金額より多めに取っておきたいところです。
そのため、キャンセルリスクを下げるために、まずは引渡日をなるべく短くすることが大切です。これは、手付金額と一緒で事前に営業担当者に伝えておきましょう。
そうすれば、売却活動の過程で営業担当者が購入検討者に対して引渡し日の話をできるので、購入検討者も引越の準備など引渡しに関して事前準備ができるからです。
中古マンション売却の決済日(引渡し日)の準備と流れ|手続き手順、必要なもの
まとめ
このように、手付金は解約手付となり、売買契約を一方的に解除する場合の違約金になります。そのため、売主は買主に契約キャンセルさせないため、なるべく手付金は高額に設定したいところです。
今回解説した目安金額を参考にしながら、手付金額や引渡し日は事前に営業担当者と相談しておきましょう。
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